通常在米日系企業は、米国駐在日本人の給与を「ネット保証方式(Tax Protection又はTax Equalization)」又は「グロス保証方式」のいずれかの方法により決定しています。
1. ネット保証方式この「ネット保証方式」は、米国での個人所得税、地方税、社会保障税等差引後の純手取額を一定の金額となる様保証するものです。この一定金額には、多くの場合、基本給に加えて住宅手当、家族手当、海外勤務手当等がその対象となります。この給与決定方式は米国では一般的にプロテクション方式と呼ばれているものですが、その言葉通り、雇用主が一定の純手取金額を保証するために必要な全てのコストを負担するものです。従って、連邦及び州個人所得税、地方税および社会保険等本人が負担すべき税金は、すべて会社が負担することになりますので、これらの税金相当額は従業員の所得と見なされます。会社はこの追加給与を個人の所得に加算すると同時に同額を源泉徴収または見込納税することとなります。このプロセスは、通常「グロス・アップ」と呼ばれます。
「ネット保証方式」は、このグロス・アップによる追加給与コストのため在米日本企業に多大な費用負担の増加をもたらします。これは在米日本人駐在員が中間管理職および一般従業員である場合、この所得層の納税者の米国における全ての納税コストを合算した実行税率が日本のそれを超えるために特に顕著となります。結果的には会社は二国間の税負担額の差額及びその税金に課される税金を支払うこととなるわけです。
もう一つのネット保証方式として「税務コスト均等処理方式(Tax Equalization)」があります。プロテクション方式が、従業員が損をしないように、プロテクト(保護)するのに対して、Equalization方式では、従業員が得もしないように、一定のルールに基づき、労使間で税金負担を配分して、最終的にEqualizeさせようとするものです。
「ネット保証方式」に対し、「グロス保証方式」とは在米日本人駐在員に給与総支給額を保証する方法です。この給与総支給額は通常「ネット保証」の保証手取額を計算する際に考慮される手当等とそれに伴うであろう税務コストを含みます。
この方式は商社等、米国において事業歴の長い会社の多くが採用しています。又、米国駐在日本人会社役員、現地採用者、長期滞在者、あるいは米国永住権を持つ日本人の多くがこの方式により給与計算されています。この方式により給与計算をされた場合、全ての税務コストを最終的には個人的に負担することとなりますが、節税効果、税金の還付等については会社から制限を受けません。