1. 米国駐在員の給与・諸手当とその課税関係
A. 住居手当
駐在員の米国滞在中の家賃を会社が支払う例がよく見られますが、通常、会社の支払った家賃の全額が駐在員の給与として課税されることとなります。尚、会社が直接家を有し、その家を駐在員に貸し与えているような場合にも、適正な家賃額がその駐在員の給与として課税されることとなります。
B. 家賃等のリース
駐在員がアパートなどに入居する場合、家具を買いそろえるまでの一定期間、家具のリースを受ける場合が少なくありません。会社がこうしたリース費用を支払った場合にも、その支払いは、駐在員の給与として課税されることとなります。
C. 水道光熱費
アパートに入居する場合、水道光熱費は家賃に含まれている場合も多く見られるところですが、テナントが負担すべき水道光熱費について、会社が支給した場合には、その支給金額は駐在員給与として課税されることとなります。
D. 諸手当
尚、上記の様々な支出を一括して諸手当として給与額に加算し、そこから実際の会社支給額をマイナスする形で源泉徴収事務手続きを簡便化する例も見られます。この支給額も駐在員の給与として課税されます。
E. 海外勤務手当
海外勤務に伴う支出の増加を補うために支払われる手当で、当然課税所得を構成することとなります。
F. 転勤費用と宿泊費用
日本から米国への転勤に際し、本人・家族の航空運賃、旅費、移動中の宿泊や家財道具等の運送料などの転勤費用が生じることとなります。これらの費用は、一般に会社が全額負担しているのが通常です。米国での所得税の申告上、航空運賃、旅費と家財道具の運送料を除く転勤関連費用の会社負担分は、所得として取り扱われ、W-2(米国での源泉徴収票)の金額に含まれることとなります。
G. ホーム・リーブ
日本人駐在員に対し、一定期間毎に日本への休暇帰国を認め、その時の航空運賃、旅費、移動中の宿泊費を会社が全額負担する場合が見受けられます。こうした一時帰国をホーム・リーブと呼んでいますが、こうしたホーム・リーブに係る費用を会社が負担した場合、その支出は個人の給与として取り扱われ、また、源泉徴収の対象ともされます。
H. 会社が負担した個人の税金等
米国など海外で勤務する日本人駐在員に対し、会社が一定の手取額を保証し、本来個人が負担すべき連邦税・州税・地方税及び社会保障税を会社が全額負担する場合などがみられます。このように、会社が負担した税金は、当然のことながら、個人の所得を構成することとなります。
I. カンパニー・カー
米国駐在員に対し、会社所有の車を貸し与えることがよく行われていますが、カンパニー・カーの個人的な使用は、給与とみなされます。尚、通勤も個人的使用とみなされます。カンパニー・カーの個人的使用としてみなされる金額の算定は通常次の方法により行われます。
●適正リース料基準法
従業員にカンパニー・カーを個人使用のために貸与した日の適正市場価額を算定し、IRSが公表する年間リース料率換算票に照らして年間リース料を求めます。この年間リース料を以下の算定で個人使用分に按分し、給与として課税します。
経済的利益 = 年間リース料 × | 個人使用走行距離 |
総走行距離 |
尚、カンパニー・カーの貸与が年の中途開始又は停止された場合には、年間リース料を貸与開始日から年末又は年始から貸与停止日までの日数に基づいて按分し、その後、個人使用部分の算定を行うこととなります。また、この年間リース料は、4年リースを基準として算定しておりますので、貸与開始から4年間は年間リース料は変更しません。
2. 利子・配当所得利子・配当所得、年金収入及びロイヤリティ収入は、他の所得と区別してポートフォリオ・インカムと呼ばれることがあります。こうしたポートフォリオ・インカムを生じる元本を取得・保有するために要したとみなされる借入金に係る支払利息は、インベストメント・インタレストと呼ばれますが、利子・配当所得の金額までの控除が認められます。尚、免税扱いとされる地方債等に係る支払利息の控除は認められません。また、これら支払利息の控除は、後で説明する項目別控除を選択した場合にのみ認められますので、申告する際には、定額控除との有利・不利も考慮しなければなりません。
3. 譲渡所得 A. 有価証券等の売却益
その課税年度に行われた売却により実現した売却益と売却損を相殺して算定された金額が、利益(Capital Gain)になった場合には、その金額が課税対象となりますし、逆に損失(Capital Loss)となった場合には、最高3,000ドルまで他の所得と相殺することができます。こうしたキャピタル・ロスがその年度で控除しきれなかった場合には、キャピタル・ロスを使いきるまで何年でも繰り越すことができます。
B. 自宅の売却益の非課税上限
自己の保有する不動産の売却により生じたキャピタル・ゲインも他の所得と同様、課税の対象となりますが、納税者自身が住んでいる主要な住居(Principal Residence)を売却した場合には、夫婦で50万ドルを上限に控除されます。
不動産の賃貸に係わる所得は、家賃収入から支払い利息、固定資産税、損害保険料、管理費、修繕費、減価償却等を差し引いて計算しますが、不動産投与の当初は、損失となる場合が少なくありません。
不動産投資から生じる損失は、米国税制上、パッシブ・ アクティビティ・ロスと呼ばれており、他の所得との損益通算は認められておりません。ただし、個人の場合で、かつ、調整総所得金額(AGI)が100,000ドル以下の場合には、不動産損失のうち25,000ドルまで他の所得との損益通算が認められています。ただし夫婦個別申告の場合、年間を通して別居していた者を除いて、この損益通算は認められません。また、所得が増加するにつれて、この控除可能限度額の25,000ドルは減額されていき、AGIが、150,000ドルを超える場合には、たとえ不動産損失があったとしても、他の所得との損益通算は認められなくなります。
尚、この不動産投資から生じる損益を他の所得と損益通算するためには、不動産所有者が次のような判断を下すことが条件とされています。
●新しいテナント入居に対する許可
●賃貸期間
●修繕等に係わる支出の許可
●上記と同様の判断